※元ネタはまたも釣りバカから!もー、アルエドネタの宝庫!
「あー、ところで聞いたかね鋼の」
手酌酒でちびちびとロックをやっていたロイは、思い出したように(エドワードの方を別に見ようとせずに)言った。
「アルフォンス君は明日からのラッシュバレー一泊二日の出張を、うちの設計課のミス・アメストリスと二人で行くんだよ。いやぁ、羨ましい限り……いやいや、どうなのかねそれは」
「………ほーう?」
アルフォンスはテーブルの向かいで兄が出してくれたミモザサラダをつまんでいたが、その言葉を聞いた途端に寝ていた犬が僅かな物音で起き出す時にぴん!と耳が立つようなそんな反応をした。エドワードはというとわずかに唇の端を持ち上げて、微妙な顔をしてみせた。
「何だァ、そりゃあ。聞いてねぇぞアル。あのミス・アメストリスと二人旅ってか?」
エドワードはテーブルの上の空になった皿を持って立ち上がってそのまま台所へ立った。その声音と表情からは何故か一切、エドワードの気持ちが読み取れない。アルフォンスは口をぱくぱくさせて、一瞬だけロイのほうを振り返り何か言いたげに拳を震わせたが、ロイはそ知らぬ顔でひとりグラスを傾けている。アルフォンスはダッシュで兄へ取り縋るように近づいた。
「あっ……あのね兄さん誤解しないでね、ミス・アメストリスはボクの手違いで受諾してしまった設計課の依頼を取り消しに行くためについてきてくれるんだ、それだけなんだ、ミス・アメストリスはボクのことなんとも思っちゃいないし、ボクはこんなこと言うほどのこともないって思って、それで言わなかっただけなんだよ、こんなの全然大したことじゃないって、それで」
エドワードは取り縋るアルフォンスを振り向きもせず食器を洗っていたが、アルフォンスの表情が見る見るうちに崩れて梅雨のような顔つきになっていくのを横目で見て、体を曲げて笑い出した。
「くっ……はははっ」
「……っっ?!」
「ふふっ……バカだなアルフォンス、冗談だよ。判ってるさ。ミス・アメストリスに迷惑かけないようにしろよ」
その言葉を聞き、いつもの悪戯好きな兄の顔に戻ったのを見て、アルフォンスの顔が別の意味で泣きそうに歪められた。
「よ………よ………良かったぁ、ボクほんとに兄さんが怒ったと思っちゃったよぉ〜……」
エドワードはくすくす笑ってアルフォンスに向かって首を傾げてみせた。
「でも判んねーなァ、おまえって美人に弱いしなぁ?」
「そんなことない。兄さんが一番美人だもの。ボク兄さんしか美人って思わないもの」
泡で濡れたエドワードの手をそっと取って、アルフォンスは胸から搾り出すような声で言った。エドワードは微笑んだ。
「……ん。ほんとに?」
「ほんと。兄さんが一番。愛してる」
エドワードは目を眇めて、体をうしろのアルフォンスに完全に凭れさせた。それからアルフォンスの頬をぎりぎり掠めるようにして、甘い甘い吐息で返答する。
「じゃ、今すぐ証拠」
「ん………兄さん………ッッ」
ぐい、と抱き止める体勢から覆い被さるようにアルフォンスはエドワードを包み込んでキスをした。調度いい場所にあったダイニングテーブルにそのまま二人の上半身が倒れこみ、テーブルの上に置いてあったグラスや皿が音を立てて落ちたが二人はまったく気にしない。
ロイはいまだキンキンに冷えているウイスキーを飲み干してソファから立ち上がり、上から声をかける。
「んじゃま、私はこの辺で。帰りますよ〜……聞いてる? 帰ります〜」
※この話におけるロイの役目は非常に重要なものです。
※でも邪魔者です。
※でも合体成功。(笑)