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 好きだ好きだって言うけどね、ホントにそれしか言えないっていうか、自分でももうどうしていいか判らないんだ。僕はそれしか言えないし、言葉と躯で表現するしか出来ない。他にどうすればいいか、もし君が知っているなら教えて? どうしようもないんだ、ホントに。どうしよう? 目の前に君がいたら抱き締めたいし、その髪の毛をくしゃくしゃに撫でてみたいし、滑らかな肌の覆う丸い肩にかぶりついて歯形を付けてみたいし、君の胸に耳を当ててその鼓動を聞きたいし、そのままじっとしてたりも、したいんだ。したいことばっかりでごめんね、でもそうしないと僕は僕でなくなってしまうし、せっかく君がいるのに惜しいって思うんだ。惜しいんだ。君の存在が。でも時々君を君のままでいさせておきたくもなる、この勿体無いって気持ち、敢えて、っていう気持ちが心地良かったりもするんだ。ああでもやっぱり君に触れたい。触れたいよ。どうしようもない。助けて欲しい。僕を助けてくれるのはいつも君なんだもんね。君が好きだよ。これしか言えなくてごめん。僕はしたいことしかしてないのに、どうして泣けてくるんだろうね。僕ばかり狂ってるみたい、ううん、多分狂ってるんだけど、君と一緒なら狂っているって気にならない。ていうか、狂っているのが嬉しくなる。君の為に狂っている、君に狂わされている、なんて幸せなんだろう。このまま時が止まったっていい。本当にそう思うよ。ああ、躯が震える。今すぐ君を抱き締めたい。君を包み込んでしまいたい。どうか子津くん、僕の中にいて。離れないで。僕と繋がっていて。













「あー…………」
「どうかしたっすか? 御門さん」
「……えっとねー」
「はい」
「ああ、死んじゃいそう」
「は?!」
 汗が乾き始めた子津の胸にその額をあてていた牛尾は、そう言って深く息をついた。子津は慌てて牛尾を抱き起こす。子津に掴まれた牛尾の肩はぐったりとして、まるで死人のように力ない。そのくせ呼吸だけが必死だった。
「ほんとに死んじゃいそう」
「いや、どうしたんすか?!どっか痛いっすか?」
「ん……痛いと言えば痛いかな、肩とかお尻とか、でもどうでもいい」
「や、どうでもいいって……」
「子津くん……ごめん……」
「はい?」
「死んじゃいそう」
 唇が触れあうか触れあわないかの距離で牛尾は切なく呟いた。泣いている、かもしれない、と子津は咄嗟に感じた。背筋がぞくりとする。何で泣いているんだ、この人は?!
「死んじゃうよぉ」
「御門さん……」
 もう牛尾が言う『死ぬ』という言葉に、それが指す本当の意味が別のものであることを悟った子津は、自分の唇に額を押し付けた(というより体勢的に自然にそうなっただけの)牛尾をじっと支えた。
「子津くぅん」
「……はい」
「入れて」
「…………?!」
「入って。……擦って、もっかい」
「…………」
 子津はきちんと牛尾の言葉が聞こえていて、牛尾もそれが判っていて、二人はそのまま動かない。子津が掴む牛尾の肩が震える。子津が震えているのかも知れない。
「………っ、本当に、死んじゃうっすよ」
「死なないよ、こんなことで」
「血が出すぎなんす。出血多量じゃ人は死ぬっすよ」
「もう乾いてるだろう」
「こんなのすぐに、また…」
「子津くん……お願い」
 やはり震えているのは牛尾だった。微かに上向きなのは、そうしないと涙が溢れるからだと子津は思った。無意識のプライド。無意味な強がり。今この人にまったく必要のないもの。
「死んじゃう、君と繋がってなきゃ」
 震える睫毛が子津の頬に触れた。ふいに牛尾は子津を強く掻き抱いた。頬を擦り寄せ、わななく唇を開いて牛尾は言った。
「お願い、お願い。子津くん、抱いて。ごめんなさい。……お願いだから、もう一度、なかに、はいって、お願い」
「………っ」
 子津は瞳をぎゅっと閉じた。食いしばる歯が音をたてる。どうして自分は牛尾を泣かせてばかりいるのだろう。泣かせることしかできないのだろうか。そんなことを考えている傲慢さは、今の自分には必要無い。それだけは、子津にも判るのだ。
 子津は牛尾を抱いて、身体をぐるりとひっくり返した。牛尾は子津に覆いかぶされたかたちになり、何を、と子津を見上げると、手首を掴まれて口付けられる。
「貴方の顔を見て。ちゃんと。……ね?」
 子津が胸の奥底から大事に摘み取った声色で言うと、牛尾は視線をしっかりあわせて、涙で頬を濡らしたまま、涙の存在自体を知らないかのように、健やかに笑い、頷いた。