「速水、貴方に逢いたイ」
俺の受難の日々は、そんな言葉から始まった。
ロサンゼルス451便に乗ってヤツはやってくる。ヴォルグ・リターンだ。ホラー映画か何かのサブタイトルみたいだが、俺は確かにそんな認識を持ってチケットを見つめた。これはコピーであって、本物ではない。大体コピーってどういうことだ。迎えにくるくらい時間と場所を指定すりゃサルでも来られるだろう。心配だから送りまス、これは僕が乗ってくる便ですヨ、覚えておいて下さいネ、なんて、こういうまったく意味のないどころか意味不明な行動をとるアイツは、ああやっぱりアホだ。捨てずに持ってくる俺もアホだ。どっちもアホなのか。いや俺はまだそこまでアイツに毒されてはいないハズだ。と思いたい。俺はマトモだ!おかしいのはアイツだ!迎えに来て下さイと電話で急に言われて30分後には俺があの憎き憎き憎き幕之内に負けてからは滅多にない週間ボクシングファンのインタビューの予定が入っていたというのにジムの連中に白い目と好奇の目で見送られながら空港まで車を飛ばして時間に遅れないように迎えにくる俺は、ああ、だが、もっとおかしいのかもしれない!
……そうか、俺もおかしいのか……
俺は薄く微笑んだ。思考に納得したワケではない。思い出したからだ。確か羽田行きの直行便が取れなかったから大韓航空の乗り継ぎで来るって言って……言って、どうした?アイツは確かに電話で6時間遅れまスと言わなかったか?
週間ボクシングファン、今月の俺のページは、幕之内一歩の日常に迫るという見出しでとって変わられていたらしい。余りに悔しくて買って破いてやったから俺は読んでいない。
(05312002の日記より)
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