ファイナル・ラバーズ進化論。
「言葉で表してみたらどうよ? お前いつも態度で示してるからウザがられるんだよきっと」
「あのねぇ兄さん。自分のことでしょソレ。何でそんな的確に他人事扱いなの」
「これでもオレは毎日考えてんのよー。お前とのことをさー」
「ふ、ふぅん…。どこからどう見てもそんな風には見えないけど、それがもし本当ならボク嬉しすぎてどっかイッちゃってるところだよ」
「うん。だからあえてそうは見せてない」
「根こそぎ言っちゃってるじゃん今! どうなのほんとソレ! ワケ判んないから!」
「ワケ判んなくて結構。いつの時代でも兄弟ではお兄ちゃんが苦労するものよー。兄の心弟知らず」
「語呂悪。あーもう迷惑ばっかかけててすいません。ほんとすいません。ああもう。判ってますすいません!毎日兄さん見て勃起してすいません」
「直接的な被害がないだけマシだが……間違いなくセクハラだから往来では自重するように」
「体の線がくっきりと出る服を着て美貌と笑顔と色気を振りまく兄さんもセクハラかと存じますが」
「お兄ちゃんは時々お前が何語を喋っているのか判らなくなるよ、アルフォンス」
「判らなくて結構! 今更こんな些細なこと判ってくれなくたって大して変わらないもんホントに。ぶつぶつ」
「そんで本題よ。お前結局オレのことどーしたいわけ」
「え」
「抱きたいの?」
「いや、えー、あの、待って。ちょっと待って。そ、それやめて。上目遣いで喋るの」
「あぁ悪ィ。……お前はオレとセックス出来たらそれで満足なのか」
「…………違うと思う。ボクのこと好きじゃない兄さん抱いたって嬉しくない。きっと勃たない」
「勃ってんじゃん」
「それは視覚的、生理的な意味でね。いざ兄さんを抱こうと思ったら勃たないよ。気持ちの問題だよ」
「何で勃たねぇの」
「……ああイライラしてきた!!」
「な、なんだよ怒んなよ」
「ボクにとって兄さんはただの性欲処理の対象じゃないんだよ。兄さんがボクのことを好きで、セックスしたいって思ってくれないのなら何でボクが兄さんのことを抱けるの? 出来るワケないでしょ? そんなのただの強姦じゃないか」
「……ああ、うん。やっぱりなぁ」
「やっぱりって……」
「うん、何か判った。言葉にしてくれて何か凄い理解っつーか再確認できた。うん」
「……………」
「なんか、嬉しいな。……ありがと、アル」
「いみ判んない……」
「あー、なんてーの? オレの弟は世に誇れるなぁと」
「……は……ははは、やっぱし……。そんなことだろうと思った……ふーっ……ああクソ。有り得ない……あーもー」
「そんでよ。この機会だからもひとつ聞いとくけど」
「ほんと可愛いからマジで……あー離れられないなぁ……参ったなぁ……あー好きだホントに。……って、はい?」
「うん、いやな、答えにくい質問だと思うんだけどよ…つかオレも聞きにくい質問なんだけどよ」
「何でもどうぞ。ボク結構自暴自棄気味だから今のうちに」
「……あのよ」
「はい」
「お前の夜のオカズってさ、やっぱオレなの?」
「……はい?」
「いやあの……オレはまあその辺のテレビの女の子とかで適当に抜いてんだけどよ。お前の場合どーなのかなと」
「………………プライバシーの侵害。兄さん犯罪。し…信じらんないからソレ。…開いた口が塞がら…………」
「わーってる、わーってるって! ただなー、オレも複雑なのよ! なんつーの、お前がしょっちゅうオレ見て色気がどーのこーの抱きたいだのエロいだの突っ込みたいだの言うし、他のヤツにはンな事全然言わねーし、つか他のヤツには勃たねぇとかお前言うし実際そーだし、……そんでもう、お前が真っ赤になってトイレに行ったりとか…夜とか…ついつい考えちまってよー、もうなんつーの? 落ち着かねーんだよ! オレが!」
「……………ごめん。」
「いや……オレこそ悪いんだけどよ……ハッキリさせたいつーか……一応聞いておきたいなーと……」
「ふーっ………………」
「………………」
「……いつも兄さんのこと考えて、してる。兄さんがボクのこと好きになってくれたらって、それ考えたら他に何も考えられなくなるくらい幸せになって、すぐにイッちゃうよ。……そのあと泣きたくなるくらい凄く空しくなるけど」
「……オレがお前のこと好きって……いつもオレはお前のこと好きだけど」
「そうじゃなくてね。ボクを独り占めしてくれたりとか、往来で自分から手を繋いできてくれたりとか、キスをせがんでくれたりとか、そういうことを想像するの」
「お前はそれで幸せになれんのか」
「なるよ。兄さんと一緒の今はいつでも幸せだけど、……やっぱりボクは兄さんをただの兄弟として見ることは出来ない。他の人と一緒にいて欲しくないし、ボクだけが欲しいって思ってて欲しいし。ワガママ言って欲しいし、ヤキモチ焼いて欲しいし、……お互いを求めるセックスがしたいよ」
「………ん………そっか」
「……ごめんね」
「いや謝んなくてもいいよ。……オレもごめん。……なんか」
「いいってば。ボクは謝って欲しいわけじゃないんだから」
「ごめん」
「ああもう。えーとですね、兄さんが謝らないようになってボクもぶっちゃけちゃってスッキリするいい思い付きがあるんですけどいいですか?」
「何だよ」
「兄さん最初に言葉で表せって言ったよね?」
「言ったな。忘れてた」
「管理人はこれ最初ひとり言に書いてたネタで、すぐオチのボクの台詞を言わせるつもりだったのに兄さんが忘れてたせいであまりにも長くなりすぎてファイナルラバーズのシリーズものになっちゃったんだけどね」
「またオレに理解できない世界の話をしている……」
「いやまあ理解しなくてもいい話なんだけどとりあえずオチだけ言うと、兄さんをどれだけ好きかって言うと例えば兄さんがもし女の子だったら速攻犯して孕むまで何回も中出しして絶対堕ろさせないで子供生ませてるってくらいに好きなんだよって真剣に言ってた」
「……………………………アル…………」
「はい。ごめん。いくら何でも妄想をはっきり言いすぎだよね、しかも本人に向かってね。ごめんほんと(ていうかそんな顔しないで兄さん!また勃っちゃうからああもう)」
「いや、オレお前の言ってること半分くらいしか判んなかったんだけど」
「そんなバカな」
言葉でしか分かり合えないこともあるのさ! 頑張れエルリック兄弟! まだまだ語り合える余地はあるぞ! (だからと言って何が解決するのかは判らない)