ファイナルラバーズ・ヴァンプな日々





「そんなわけで吸血鬼アンソロジーの始まりですよ!手始めに兄さんがなんと吸血鬼になってしまいました。ドーン☆」
「いやドーン☆じゃねえから。何なんだよ一体!人の了解も得ねーで勝手にこんな」
「うっわーーーーっっ兄さんに羽が生えてる尻尾も生えてる八重歯も生えてる!何コレ何コレ何コレ!!耳もなんかとんがってるんですけど!ギャ〜ッ!か、か、可愛い〜〜〜〜〜〜っっっ(だんだんだん地団太)」
「元に戻っていい?」
「そ ん な 馬 鹿 な 。今までのボクのはしゃぎっぷりをどうしてくれる」
「だっておまえ、吸血鬼つってもなーんもイイコトねーぞ〜? ニンニクと十字架と日光がダメでその上血を吸わなきゃ生きてけねーなんて」
「そのうち元に戻るから今のうちに役得を楽しんでおけばよいというのがボクの意見です」
「ヒトゴトだと思いやがって!手始めにテメーの血を吸ってやろうか?あァン?!」
「………………………(ポッ)どうぞ」
「やめとくわ」
「そんな弟だからって遠慮せずに!さぁどうぞ!」
「血ィ吸ってる方がなんでセクハラされてるみてぇな気分になんだよ!嫌だよオレは!」
「だっ…だっ…だって今の兄さんってなんかこう…全体的に黒っぽいのに金髪はそのままで余計に映えるし…ぱつぱつぱんつがむやみやたらに強調されて見えるし…目の縁取りは濃くてまつげばしばしで白いほっぺに薔薇のよーなぷるぷるのくちびるでもうっ……あああぁああぁっ、何コレ?!何て言ったらいいの?!傍にいるだけでなんかドキドキしてきた!何コレ吸血鬼の力かなんかですか?」
「寝るわオレ」
「コラーーーーーー!これから夜じゃないですか!吸血鬼が夜に寝ていいと思ってるんですか!!」
「んなおまえ……、世の吸血鬼が全員昼間に寝てるなんて決まってねえだろ。吸血鬼も変わった奴がいんだよ」
「そうだね……。なんかもう吸血鬼じゃなくてサキュバスと言った方がしっくりくるのだっているよね……」
「言いたい放題言いやがって。覚えてろテメーが寝てる間に血ィ吸ってやる」
「無理だと思います。今の兄さんは近づくだけでその色気で目が覚める」
「もう嫌こんな弟」
「ボクのせいだけじゃないもん!兄さんだって原因あるだろ!そんな、……そんな色っぽい雰囲気垂れ流しで始終いられたら……っっ」
「何だよ」
「我慢……出来ないよっ……!」
「いつもそう言ってる割には結構我慢してるよなおまえ……」
「てゆーか、そのためのアンソロジーだよね……こういう時くらいはハメをはずしてもいいのよという神様の思し召し……」
「え。……なに。ヤル気?」
「いや、だって、なんかこう、今の兄さんってマジでヤバいんだよ。ほんと気付いてないんだろうけど。ヤバいよね。なんか今のボクならホントに最後までやっちゃえそう……」
「お……オイオイオイ! ちょっと! 寄るな! つーか離せバカ!」
「愛してる愛してるって、言葉で言ったって判らないなら体で判ってもらうしかないんだよね……兄さん……」
「判ってるって!だから離れろ!!」
「じゃ大人しくしてて……あとでたっぷり血を吸わせてあげる。これこそ等価交換」
「わーーーーーッッ、バカバカ、ちょっ……わ、わ、アル、ちょっと待てーーーーーーー!」
「んもう……これ以上待てない……っっ!」
「いや、もうページ数がない。」
「なんでじゃーーーーーーーーーーーー!!!!」








ファイナルラバーズ・ヴァンプな日々・2





「ちょっと何コレ?!『2』って何!? ページまだあったんじゃん!!あともうちょっとで兄さんの吸血鬼ナマ肌を堪能できたってゆーのに……ッッ!」
「しっかし実際吸血鬼になってみるとアレだなー」
「え?何リラックスしてんの?また最初から?(血涙)」
「まあ聞けよ。吸血鬼になった途端力が漲るっつーか、羽とか動かすの楽しーし、飛べるし背も高くなったような気もするし(!)。案外気分いいんだよなー。フッ」
「ほーう。じゃあアルエド的には血を吸う代わりに兄さんはボクに体を提供するとか羽や耳が特に感じやすかったりとか一晩中やってても疲れなかったりとか、そーゆー素敵オプションもついてくるはずでしょ普通! 出しなさい!」
「あるかそんなモン! ボケ!」
「……そ、そんなバカな……! ないはずがない! そんなの、何のための吸血鬼アンソロなんだ……! 吸血鬼になったら普段出来ないこと兄さんに色々させてもらえるはずなんだ……ッッ!!」
「オレはなんでおまえの兄貴なんかやってんだろうな……」
「大体兄さんも兄さんだよ。吸血鬼らしいこと全然してないじゃん!まず血を吸えよ!ボクの血を!このアンソロの一番の期待ドコロなんだよ!ボクの血を吸うやらしい兄さんってゆーのが!ああっもう想像するだけで動悸息切れが。眩暈が」
「おまえもな、血を吸われる側としてふさわしい態度ってモンあんだろ。何だよその今から○ッキーに握手してもらいに行くんです!的な期待に溢れたキラキラな目つきは。吸う側として腰が引けるだろ」
「じゃどうすりゃいいんだよ」
「怯えてみせろ。逃げ回ってみろ。そしたら追いかけて押し倒して噛み付いてやる」
「………………!」
「お? 何だ? ヤル気になったか?」
「……………す…………すすすす凄いそれ…………萌える…………に、兄さんに追いかけてもらえて押し倒してもらえてとどめに噛み付いてもらえるなんて……っっ!!!わーっわーっ想像しただけでもう……もう…………ッッッ!!!じゃ、じゃあ今から逃げますんで!ひとつよろしく!」
「萎えた」
「なんでッッッ!!!」
「もうあれだよ、おまえ根本的に間違ってるから」
「………………ううう…………(泣)。も〜、兄さんはせっかくのこの機会をただのイチャイチャバカップル会話のみで終わらそうってワケ?そーゆーのって人道っていうか吸血鬼道に反すると思わない?」
「おまえはこの会話をイチャイチャバカップルと思っとるのか……」
「だって兄さん、ボクのこと嫌いか、何とも思ってないならこのバカな会話から逃げることだって出来るのに、さっきから全然そんな気配も見せないし」
「…………………………………」
「ほらほら、何か言ってみてよ」
「……………うるせぇな……………」
「かわいいなぁ……。あーもーそーゆーとこがもうっ……ねぇねぇ、羽触っていい?」
「あのな、またそーゆー唐突に……て(びく!)ぅ、わ、何すんだバカ!」
「え、何その反応? やっぱり感じるの?(さわさわ)」
「うぁ!……ッッ、………っ」
「に、兄さん……なにその顔……」
「ちょ……バカ、やめろ、やめ…ろって……!」
「こ…ごめん、やめらんない……ねぇ、気持ちいい……?」
「……ぅひ、……ァ、……(ふるふるっ)」
「首振ってもダメ……顔と声で判っちゃうよ…兄さん、ねぇ、ここがいいの……?」
「ちょ……! あっ、マジでダメだ、そこは、アル、アル!………アル……やめ……ッ」
「うわーっ……兄さん………かわいい……すごくかわいい………ッッ」
「あ、アルフォンス………ッッ」
「兄さん……ッッ!!」
「……………って、やめろっつってんのがわかんねーのかこのナチュラルボーンセクハラ野郎ーーーーーーッッッ!!(回し蹴り命中)」
「ギャーーーーーーーーーッッパワフルになった吸血鬼いつもの兄さんの一、五倍のハイキックーーーーーーーーーーーーーッッッッ(どがらっしゃぁぁぁぁぁん)」
「…………(ぜぇぜぇ)おまえアレだな……とりあえず望みは叶ったよな……」
「……叶いました死んでもいいですあーもー兄さん可愛すぎる…マジでダメだ…どうしようああもうやらしーかわいい色っぽいああああも〜ほんっと大好き兄さん……………ガクッ」
「あ、死んだ。……これで心置きなく血が吸える」
「んな殺生な……!(倒)」




あとがきのかわりにその後

目の覚めたアルフォンス。
「………………兄さん……………一体どれだけボクの血吸ったの……………(息も絶え絶えでぶっ倒れつつ)」
「いやぁ、この機会逃したらいつ吸えるか判んねーから死なない程度まで吸わせてもらった!(笑顔)」
「く、クッソ〜〜〜〜〜……………つ、次はゼッタイ絶対ぜぇ〜〜〜〜〜ったい意識のあるときに吸わせてやる………ッッ(握り拳)ガクリ」